| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨


一般講演 P2-048

ボルネオ島熱帯雨林の土壌呼吸 −空間的ばらつき解明への挑戦−

*片山歩美(九大院・農),久米朋宣(九大院・農),大橋瑞江(フィンランド森林研究所),熊谷朝臣(九大院・農),鈴木雅一(東大院・農), 大槻先生(九大院・農)

地球規模炭素循環において重要な役割を果たす熱帯林において,正確な土壌呼吸の代表値を算定するためには,土壌呼吸速度の時系列変化と空間的ばらつきを把握しなければならない.しかし、アジア熱帯林の土壌呼吸に関する知見,特に空間的なばらつきに関する報告例は極めて少ない.したがって本研究の目的は,アジア熱帯林の土壌呼吸の時系列変化と空間的ばらつきを解明し,土壌呼吸の発生メカニズムを把握することである.そのために,年間を通して気温と降水の明確な季節変化のないボルネオ島ランビルヒルズ国立公園の低地熱帯雨林を対象に,2002年より25地点において不定期に土壌呼吸速度の観測を実施した.また,同地点の林分構造を調べ,さらにリターフォール量および物理環境の連続観測を行い,土壌呼吸との関係を調べた.

他の熱帯雨林に比較して,本試験地の土壌呼吸速度の時系列変化は小さい一方,空間的ばらつきは非常に大きかった.空間的ばらつきは,その地点における地温や土壌水分よりも,地点近隣の平均DBHおよび根量と対応していた.したがって本試験地では,樹木の根量が空間的ばらつきに強い影響を与えていると考えられる.また,他の熱帯雨林に比較して本試験地の年間リターフォール量は小さい一方,年間土壌呼吸速度は大きいことから,本試験地では樹木の地下への炭素配分が大きいと考えられる.これは土壌表層部の根量が,他の熱帯雨林に比較して大きかったことからも示唆される.これらのことより,本試験地の土壌呼吸の変動には,根が重要なファクターとして働いていると考えられた.

日本生態学会