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一般講演 P2-049

タイ北部落葉熱帯季節林の土壌呼吸−年々変動の世界記録を更新か!?

*久米朋宣(九大農),橋本昌司(森林総研),田中延亮,吉藤奈津子,鈴木雅一(東大農)

降水の季節変動・年々変動が大きいタイ北部落葉熱帯季節林(チーク人工林)において,土壌呼吸量の年々変動の実態を明らかにするため,4ヵ年にわたる土壌呼吸,土壌中CO2濃度,物理環境計測を実施した.本研究では年間土壌呼吸量を算定するために2つのモデル(土壌水分と地温の重回帰モデル及び,土壌中CO2濃度と土壌水分データを入力とするフィックの第一法則を用いたガス拡散モデル)を構築した.本試験地の土壌呼吸は土壌水分の影響を強く受け,土壌が湿潤な雨季に大きく乾季に小さい.両モデルはともに,雨季,乾期前半,乾季後半に直接計測された土壌呼吸量を良好に再現し,4ヵ年の土壌呼吸の季節変動,年間量を良好に再現するものと判断された.

本試験地では雨季の長さ及び土壌が湿潤な期間が年々で2ヶ月程度異なった.その結果,重回帰モデル,ガス拡散モデルによる4ヵ年の年間土壌呼吸量は,8.7−11.8 tC/ha/year,8.3−12.2 tC/ha/yearの範囲となり,年々変動はそれぞれ,2.9,3.9 tC/ha/yearとなった.本研究の結果は,全球を対象としたときの年間土壌呼吸量の年々変動(0.17 tC/ha/year [Raich et al. 2002;Global Change Biol 8:800-812])の17−23倍となった.また,既往の年々変動の最大値であるアメリカ温帯林の2.3 tC/ha/year[Savage&Davidson 2001;Global Biogeochem Cycles 15:337-350]を超える年々変動を示した.本試験地の年間土壌呼吸量は年々変動が大きいため,平年値を得るためには,少なくとも5−8年以上の計測が必要になると推定された.

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