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一般講演 P2-054

非同化器官による林冠内の光減衰効果と吸光係数の評価

*千葉幸弘(森林総研),右田千春(東大院)

林冠内を透過する光の減衰は、Beer-Lambert則で表現され、(1)式のように積算葉量に対して指数関数的に減衰するとされる:

 I(z) = I0 exp(- K F(z))          (1)

ただし、I(z)は林冠上層からの深さzにおける光強度、I0は林冠直上の光強度、Kは吸光係数である。吸光係数Kは葉の形状や傾きあるいは葉群構造に依存すると言われる。

しかし、相対光強度I(z)/I0と積算葉量F(z)の関係が単純に指数関数で近似されることは希であり、この関係は片対数グラフ上で負の勾配を持つ直線ではなく、下に凸あるいはその逆の曲線と見なされることが多い。(1)式が成立しない主たる理由は、すでに指摘されているように、枝や幹などの非同化器官による遮光効果が考慮されていないことによる。

本研究では27年生コナラ林において、林冠を一辺50cmの立方体に区分して、葉の枚数等を計測するキューブ法により、非破壊的に葉と枝の表面積を推定し、それらの空間分布を得た。さらに全天空写真から求めた開空度から林冠内の光環境を類推して、葉および枝による吸光係数をそれぞれ推定した。

葉と枝の垂直分布をモデル化することにより、両者の分布形態が林冠内の光減衰に及ぼす影響を比較・検討する。また、一般的に用いられている光減衰 (1)式に関する林冠構造の影響ならびに吸光係数の解釈について吟味する。

日本生態学会