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一般講演 P2-055
亜熱帯林のリターフォール量及び地上部現存量の生長量は,気温や降水量,台風等の気象要因に影響を受けていると考えられる。私たちは気象要因が亜熱帯林の生産量に及ぼす影響を明らかにするため,林齢の異なる亜熱帯林(二次林から極相林まで)に固定試験区を設置し,林分レベルのリターフォール量と個体レベルの生長・枯死の動態を1998年から長期観察している。本研究では,過去8年間のデータに基づき,リターフォール量の年変動を引き起こす気象要因,さらにそれが二次林や極相林の生長動態に与える影響を解析した。
年間のリターフォールを,6〜11月と12月〜5月の二時期に分けて,気象要因との対応を検討した。各年の6〜11月の夏季リターフォール量はその年の台風の最大風速と正の相関があった。一方フェノロジカルな葉の入れ替わりで生じる12月〜5月のリターフォール量は,前年の降水量が少ないと増加する傾向があった。また12月〜5月のリターフォール量の年変動はプロット間での同調性が高かったが,6〜11月の夏季リターフォール量はプロット間変異が大きく,林分構造や地形によって台風撹乱の影響が異なることが示唆された。地上部現存量の生長量の年変動を二次林と極相林で検討した。台風撹乱が影響していた6〜11月の夏季リターフォール量が増加すると,地上部現存量の生長量は増加する傾向があった。
以上の結果より,台風撹乱による夏季リターフォール量の年変動は,地上部現存量の生長量に影響し,亜熱帯林の生産量を調節していると考えられた。