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一般講演 P2-061
生物群集の構造と動態は構成種の相互作用に大きく依存する。May(1972)は、数理モデルを用いて、複雑な食物網は不安定であることを示したが、これはそれまでの経験的な食物網の見方とは全く相違している。その後の複雑性(多様性)と安定性の関係についての理論研究の多くは、食う食われる関係と競争関係の一方のみに注目してきた。
2005年、難波らは、消費者と多くの生産者からなるモデル群集で、より強い植物間の種間競争が、より多くの生産者の共存を助けることができることを報告した。そこで、本研究はこのモデルに消費者を1種増やし、生産者間の種間競争と消費者の探索効率(生産者の食われやすさ)がどのようにからみあって、種の多様性に影響を及ぼすかを調べた。
生産者の内的自然増加率をr、種内競争係数を1、種間競争をcとする。消費者の死亡率をd、転換効率をbとし、2種の探索効率をそれぞれa1i、a2iとする。探索効率は最大値と最小値の間に昇順または降順に均等に分配すると想定し、競争係数cは1より小さいとする。
結果は、 (1) a1jとa2jの範囲が大きく重なっているとき、2種の消費者が共存し、そして、消費者が1種の時よりも、より多くの生産者が共存できる; (2) 植食圧が強くても、2種の消費者が共存する場合、競争が強くなっても、共存する生産者の種数は減少しない; (3) 2種の消費者が共存すると、種のプール(S)のサイズが大きくなるとき、共存する生産者の種数は、より明白に増加する; (4) 探索効率が高く、2種間で重なりが大きいとき、生産者の種間競争が強くなるほど、2種の消費者が共存しやすくなることがある。したがって、生産者間の種間競争は生産者の多様性も消費者の多様性も高めることができる。