| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨 |
一般講演 P2-063
一般に、生物個体は出生後成長を繰り返すことによって各生育段階を経過し、繁殖段階に至った個体は新たな個体を産出する。また、それら一連の生存・成長・繁殖の過程において負の密度効果を受ける。これら二つの性質(生育段階構成、負の密度効果)は基本的な性質であるため、負の密度効果が生育段階のある集団動態の安定性に与える影響について検討するために、以下の推移系モデルについて解析を行ってきた。
dx1/dt = f(X)xn-g1 (X)x1-m1 (X)x1
dxi/dt = gi-1 (X)xi-1- gi (X)xi-mi (X)xi (i=2,..,n-1)
dxn/dt = gn-1 (X)xn-1-mn (X)xn
式中、xiは生育段階iの個体数、Xは(x1,x2,…,xn),およびf,g,mはそれぞれ繁殖率、推移率、死亡率を表す。この推移系では、(1)最終生育段階の個体のみが繁殖に寄与する、(2)繁殖率、推移率はxiの減少関数である、(3)死亡率はxiの増加関数である、と仮定した。
昨年の講演では,n=2, 3の場合について、f,gi,miが密度効果を受ける形式を変えて、平衡解の局所安定性を検討した結果を報告した。その結果,(a)原点の局所安定性と正の平衡解の関係(b)密度依存関数が1つである場合に,n=2,3で正の平衡解を不安定にする密度効果について報告された。
本講演では,密度依存関数が複数個である場合に、複合的な密度効果によって正の平衡解の不安定が引き起こされること,またその条件について網羅的に解析した結果を報告する。また、より現実的な状況に対応するため,仮定1を緩めて下層個体でも繁殖が可能であると仮定した場合に成立する一連の定理と解析について報告する。