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一般講演 P2-064
生物種間の共生・寄生関係の進化に関して、寄主個体群の空間構造が大きな要素のひとつであることが多くの理論的研究で明らかにされている。この研究では、密接な共生関係が始まる前の原始的な非共生状態から寄生および共生関係がどのように進化するのかということに関して空間構造の与える影響を考察するために、2重格子モデルを用いて条件的共生関係にある2種(宿主と共生者)の進化動態を解析した。2次元正方格子空間が2枚重なっていて、一方の格子空間には宿主、もう一方には共生者の個体が分布していると仮定する。種間の相互作用(共生)は、2枚の格子空間の対応する格子点の間でのみ生じるとする。共生者は宿主がいなくても生存や繁殖は可能だが、宿主と共生することで繁殖率が上がる。一方、宿主は共生者の有無によって生存率・繁殖率が変化するが、変化の方向は共生者が宿主を扶助する場合(相利共生)は正、宿主を搾取する場合(寄生)は負になる。宿主・共生者共に自分がいる格子点の近傍の空き格子点にしか増殖できず、また宿主の繁殖の際の共生者の垂直伝達はないとする。共生者が宿主に与える影響を進化させた場合のシミュレーションでは、共生者は宿主なしでは繁殖力が小さく、宿主の平衡密度が小さく、かつ共生者が宿主を搾取しなくても共生による利益を得られる場合、最終的に相利共生が進化する場合があることがわかった。