| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨


一般講演 P2-067

作物の病害規模における圃場サイズ依存性

*鈴木清樹,佐々木顕(九大・理)

前回の発表にて演者らは、一圃場内において一回の作付け期間内に広がる病害規模を想定し,病害の流行を防ぐための最適な感受性品種(S)および抵抗性品種(R)の混植割合と,それら栽植様式についての理論的アプローチについて紹介した.本モデルは、感染と枯死過程のみを考慮したシンプルなSIRモデルであり,空間的にランダムに作付けたRの割合をP とし,病害の流行を防ぐための閾値Pを求めるものである.作物の最終収量(未感染個体)によって評価すると,平均場空間ではP の減少に比例して最終収量が直線的に減少した.一方,格子空間ではP の減少に対して最終収量がシグモイド形に減少し,感染率を上げてもPはある一定の値で漸近化し,平均場よりも高い最終収量で推移した.そこで今回は、格子シミュレーションによる作物の最終収量を評価した際に,母集団である圃場サイズ(格子サイズ)がどのように病害の規模の評価に影響を及ぼすのかを解析した.初期に宿主集団に導入する感染個体(I)の頻度を一定にし,P の関数として描かれた最終収量のシグモイド曲線を比較した場合,格子サイズを変化させても明確な差異はみられなかった.一方、初期導入のIを1つのサイトに固定すると、格子サイズの増加に伴ってシグモイド曲線が顕著に立ち上がり,ある値を閾値に明確な相転位をみせた.さらに,各P における最終感染者の度数分布(クラスター数)に対するスケーリング仮説をもとに、感染過程を含んだ有限サイズでのパーコレーション閾値を求めた.

日本生態学会