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一般講演 P2-069
ネムノキマメゾウムシとホソヘリカメムシは、共にネムノキの種子捕食者である。和歌山県紀ノ川の河川敷における著者らの先行研究からは、ネムノキマメゾウムシ幼虫が侵入して内側から食害中の種子をホソヘリカメムシが外部から吸汁するとマメゾウムシ幼虫は高い確率で死亡してしまい羽化できないことから、この2種は非対称な競争関係にあることがわかっている。このような場合、競争排除によって劣位な競争者が駆逐されるはずだが、実際にはホソヘリカメムシとネムノキマメゾウムシは同所的に存在するので、微細生息場所でニッチ分割が起こっている可能性がある。先行研究ではこれら両種がネムノキの樹齢に依存して選好性をずらしている可能性が示唆されている。そのため2次元格子モデルを用いて数値シミュレーションを行ってこの選好性のずれがマメゾウムシとカメムシの共存を説明できるかどうかを調べる。
河川敷ではしばしば洪水による撹乱が起こり、パイオニア植物であるネムノキの生育に適した場所が生じるため、様々な樹齢の株が存在する。マメゾウムシが個体群を維持するには、ネムノキの年齢に応じた選好性(さやニッチ)をどの程度ずらせばよいのかを解析する。(1)ネムノキは格子点上に分布し、洪水などによって倒木すると空き地点となる。(2)若木ほど洪水によって死にやすい。マメゾウムシは若木、カメムシは古木を好む。選好性は正規分布で表す。(3)ネムノキ種子と2種の昆虫の被食−捕食関係はNicholson-Baileyモデルで定式化する。(4)ある格子点にカメムシとマメゾウムシの両方がいた場合は、カメムシ吸汁によってマメゾウムシ幼虫が死亡する。以上の個体群過程を2次元格子の各格子点で計算し、隣接の格子点との移動分散を繰り返す。これにより、時空間ダイナミクスを予測する。