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一般講演 P2-076

白樺湖カブトミジンコ( Dapnia galeata ) 個体群の遺伝的組成

*小林拓, 渋谷浩之, 時下進一(東薬大・生命), 坂本正樹, 河鎮龍, 花里孝幸(信州大・山地水環境教育センター), 太田敏博, 山形秀夫(東薬大・生命)

 信州大学山地環境教育研究センターの花里らによって、霞ヶ浦由来のカブトミジンコ ( Daphnia galeata ) を長野県の人工湖である白樺湖に放流して水質等の改善を試みる Biomanipulation 実験が行われており、現在までに水質の改善が確認されている。そこで本研究では、花里等との共同実験により白樺湖のカブトミジンコ個体群の遺伝的組成を Simple Sequence Repeat (SSR) を用いて解析する事を目的とした。

SSR は DNA 上の塩基配列中に、 2〜5 塩基を単位とした繰り返し配列を持つ構造の部分で、機能的制約を受けないため、生物の個体間で違いが生じやすく、近縁の個体間や同じ個体の細胞間にも多型がみられる。

現在までに 28 座位の SSR を単離し、このうち個体識別に有用な 5 遺伝子座を決定した。さらに既に報告されている D. galeata medotae の 3 座位を加えた 8 座位の SSR を用いて白樺湖のカブトミジンコの個体群形成を解析した。実際には白樺湖を生息地の特徴から 3 つのサイトに分類して、各サイト由来についてクローン化したカブトミジンコをサンプルとした。その結果、 3 サイト間には遺伝的に大きな違いは無く、白樺湖全体で 1 つの個体群を形成している可能性が示唆された。さらに近隣の湖沼のカブトミジンコの SSR と比較した結果、白樺湖のクローンには近隣の湖沼と同一で霞ヶ浦由来のカブトミジンコが持つ SSR とは異なる SSR が存在した。このことから遺伝子移入の可能性が考えられるので、今後はさらに詳細な解析を進めていく予定である。

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