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一般講演 P2-078
ヒルムシロ属(ヒルムシロ科)は,通常は沈水状態で生育するが,なかには生育型可塑性を持ち陸上でも生存可能な種もいるなど,生態的に多様化している.第53回大会では,近縁だが生態的特性の異なるササバモ,ガシャモク,ヒロハノエビモでは,自作のマイクロアレイ解析より高温耐性が低いものほど高温処理でストレス応答遺伝子群が過剰に発現することを報告した.その後の実験で,高温耐性の高いササバモでは春と秋で高温ストレス応答が異なる可能性が示唆され,高温耐性の高低は馴化能の違いによるものではないかと考えた.そこで馴化によって高温ストレス応答が変化するのか,また高温耐性の異なる種では馴化能に違いがあるのかを調べた.
ササバモとヒロハノエビモを2条件【馴化無(25℃恒温),馴化有(30℃ 4h / 25℃ 20h)】で栽培し,高温(35℃)処理時の遺伝子の発現をマイクロアレイ解析とリアルタイムPCRによる定量的発現解析を行って,高温ストレス応答を種間で比較した.
マイクロアレイの結果では,高温処理4時間で,ヒロハノエビモは馴化の有無に関わらず前回の結果と同様に多くのストレス応答遺伝子の発現量が増加した.一方,ササバモは馴化無だと多くのストレス応答遺伝子の発現量が増加したが,馴化有だと一部の遺伝子で発現量の増加が抑えられた.リアルタイムPCRの結果では,馴化によってササバモとヒロハノエビモの両方で発現量が変化する遺伝子と,ササバモでのみ発現量が変化する遺伝子があった.これらの結果より,ササバモでもヒロハノエビモでも高温馴化は見られるが,ササバモの方が馴化の程度が大きく,これによって高温耐性がもたらされていることが示唆された.