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一般講演 P2-081

カラマツ高齢人工林を構成する高木種個体群の構造と動態

長池卓男(山梨県森林研),高野瀬洋一郎(新潟大)

カラマツ高齢人工林の生態的管理を考えるために、構成する樹木の成長および動態を明らかにした。2000年、山梨県北部のカラマツ人工林に(当時57年生)、0.42haの固定調査地を設定し、内部を5m間隔で区切った。胸高直径3cm以上のすべての生立木を対象に毎木調査を行い、2006年に再計測を行った。植栽されたカラマツは立木密度で全体の20%、胸高断面積合計で80%を占めていた。2000年にはカラマツを含めて45種(うち高木種は32種)出現していたが2006年には2種減少し新規加入種は見られなかった。多くの種で立木密度は減少し、胸高断面積合計・平均胸高直径は増加していた。胸高断面積合計が増加していた主な種はカラマツ、イタヤカエデ、ウリハダカエデ、シナノキ、ミズキであった。立木密度による新規加入速度が死亡速度を下回った種が多く、その主な種はヤエガワカンバ、ムシカリであった。胸高直径階分布は、カラマツ・その他の樹種とも小径木が減少していた。また、主な種について個体の成長量に及ぼす一方向および二方向競争の影響を5mおよび10m単位で調べた。カラマツは競争の影響は検出されなかった。ミヤマザクラはカラマツによる一方向および二方向競争の影響が検出され、それは10m単位での影響の方が大きかった。またシナノキ・イタヤカエデは5m単位でのみ影響が検出され、カラマツ以外の樹種による二方向競争が影響していた。これらの結果から、カラマツは成長に競争の影響をほとんど受けていないため間伐による成長の大きな好転は望めないこと、ミヤマザクラを今後も維持するにはカラマツによる影響の緩和を、シナノキ・イタヤカエデはカラマツ以外の樹種による影響を緩和する管理が必要であることが示唆された。

日本生態学会