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一般講演 P2-083

北海道北部のササかき起こし地における炭素貯留量の時系列的な変化

*青山圭一(北大・院・環境),吉田俊也(北大・北方生物圏フィールドセ)

北海道では1960年代後半からササが優占する無立木地を成林化するために、重機を用いた「かき起こし施業」が広く行われている。本研究では、現在のところ最も古い40年程度までのかき起こし施工林分における植生及び土壌中の炭素量を時系列的に定量化し、未施工地と比較することによって、その回復速度を明らかにすることを目的とする。またその際、施業の相対的な有効性を明らかにするために、地域の代表的な人工造林地(アカエゾマツ林)との比較を行なう。加えて、優占するササ種の違いや方法を改善した施工地との比較を通して、北海道北部における地球温暖化の防止に貢献する森林管理について議論する。

北海道大学雨龍研究林において、施工年の異なる(1-37年前)チシマザサ、クマイザサが周辺に優占するかき起こし施工地と、アカエゾマツ造林地(3-35年生)、未施工地(対照区)のチシマザサ地とクマイザサ地で調査を行なった。生態系を7つの構成要素(上層木、稚樹、草本類、リター、倒木、根系、土壌)に分けて炭素貯留量を定量化した。なお、施工時にかき起こされた表層土壌は、林分周辺に堆積されるが、本研究ではこのような箇所でも調査を行ない、最終的な炭素貯留量の評価に反映させた。

かき起こし施工地では、カンバ類が密に天然更新し、生態系全体の炭素貯留量は造林地と同程度に達していた。しかし、対照区と比較すると、植生の発達による炭素貯留量の増加が土壌中での減少によって相殺され、施工後40年程度では有意差は認められなかった。施業に炭素貯留能を期待するためには、より長い期間が必要である。今後の施業の改善へむけては、土壌の撹乱を少なくするために、かき起こしを筋状に行なうこと、さらに個々の樹木の成長を促進するための作業を組み合わせることが有効と考えられる。

日本生態学会