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一般講演 P2-085
瀬戸内地方の里山では,管理放棄や病虫害などによってアカマツ林が劇的に衰退してきた。これらの里山では,かつて大陸から導入されたモウソウチクの急速な侵入と優占が顕著となってきている。モウソウチクは里山二次林の構造や動態をどのように左右するのだろうか。香川県高松市公渕森林公園(ドングリランド)の数林分を対象として,4年間にわたって実施した調査結果の概要を報告する。
常緑性のクローナル植物であるモウソウチクは,林冠上層に高密度の葉群を持つだけでなく,冬季においても個葉の高い光合成能を維持していた。このような生産構造や生理生態的特性は,モウソウチクの高い競争能力と関連していると考えられた。モウソウチクの稈密度と林分を構成する植物種数,およびアラカシなどのこの地域の潜在的な優占樹種の相対成長速度との間には,負の相関が検出された。モウソウチクの占有によって種多様性の低下と二次遷移の停滞が生じやすくなると考えられた。
モウソウチク侵入林における林冠開空度・林床相対照度および土壌表層の体積含水率は,広葉樹林やモウソウチク除伐林より低い傾向にあった。モウソウチクの優占度と土壌含水率およびリター分解速度の間には負の相関が見られた。一方,広葉樹の優占度はリターフォール量およびリター分解速度と正の相関を持っていた。モウソウチクの優占は他植物の光獲得・水利用を制限するだけでなく,土壌への有機物や栄養塩の供給を抑制することが示唆された。