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一般講演 P2-086
1954年9月に北海道に来襲した洞爺丸台風は、道内天然林に大きな風倒被害をもたらした。その被害の総合調査のために設定された調査地のうち、現在まで継続調査が行われてきた苫小牧風害試験地のデータを用いて、風倒攪乱後50年間の森林動態を明らかにする。
試験地は支笏湖南東の苫小牧国有林内にあり、面積は1.67haでその中央部に100m×50m(0.5ha)の調査プロットが設けられている。地形は平坦地で、林床植生はシダ類が多く、ササはわずかにミヤコザサがみられる。調査はプロット内の胸高直径5cm以上の立木について番号札による個体識別を行った上で胸高直径を測定した。なお、風倒木は搬出されず林内に残されており、1956年の設定時には風倒木の樹種、胸高直径、被害の形態、風倒方向が調査された。
風倒前はエゾマツ、トドマツが本数で7割、BAで9割を占める針葉樹主体の森林であったが、BAの97%が風倒によって失われた。倒木の9割が根返りで、倒れた方向は北東−北−北西が9割を占めており南方向の強風を受けたとみられた。その後立木本数、BAともに増加傾向を示したが、立木本数は1991年から2004年の間に減少した。立木本数は1991年時点で2000本/haを越えており、競争効果による自然枯死が多かったためとみられる。風倒後の更新樹種をみると、当初は広葉樹主体で特にミズナラとホオノキが多かったが、2004年ではトドマツ、エゾマツが全体の立木本数で3割、BAで2割にまで回復しており、これら樹種の近年の進界(新規加入)が顕著である。しかしながら、上層は寿命が長いミズナラを主体とした広葉樹が占めており、今後しばらくは広葉樹主体の森林が維持される可能性が高いと考えられる。