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一般講演 P2-087

照葉樹天然林における下層群集の構造と動態

*真鍋 徹(北九州自・歴博),西村尚之(名古屋産業大・環境情報),山本進一(名古屋大・生命農学)

天然林の下層では、いわゆる稚樹バンクを形成し、生長に適した条件が訪れるまで待機するといった更新様式を採る種が存在するとされているが、照葉樹天然林での稚樹バンクの実態は明らかにされていない。我々は、どのような特性を持った種がどのような構造・動態を示す稚樹バンクを形成しているのか、それら稚樹バンクは個体群維持や群集動態にどの程度関与しているのか等を評価するため、長崎県対馬市の龍良山照葉樹天然林に設置した1haの調査区において、1989年春、2001年秋および2004年秋に、藤本類を除く胸高直径5cm未満で樹高2m以上の全樹木幹(=下層集団)の構造を調査した。

調査期間内に、39種類の樹種が確認された。幹密度はha当たり2020本(98年)〜1680本(04年)と変動した。複数の幹を持つ個体(萌芽個体)が多数存在したため、個体密度は同1891個体〜1691個体であった。幹の集団からの年当り離脱(枯損幹+進級幹)率(%/Year)は調査期間によって異なり、4.1(98年〜01年)および6.2(01年〜04年)、同加入率(%/Year)は2.6(98年〜01年)および1.8(01年〜04年)であった。一方、個体を対象とした場合、集団からの離脱率(%/Year)は、2.4(98年〜01年)および5.1(01年〜04年)、同加入率(%/Year)は2.5(98年〜01年)および1.2(01年〜04年)であり、いずれも幹の場合より低かった。

従って、当天然林の下層では、幹の死亡が必ずしも個体の死亡とは合致しないことが判明し、幹の発生・枯損を繰り返すことによって個体を維持するといった待機様式が存在しているものと考えられた。この様式は、イヌガシなど特定の樹種で顕著であると考えられた。

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