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一般講演 P2-088

四国・大野ヶ原におけるブナとウラジロモミの個体群構造

*神岡新也,二宮生夫,百瀬邦泰(愛媛大・農)

関東・紀伊半島・四国などの太平洋型ブナ林帯では、ブナとウラジロモミの混交林が存在している。これまでに太平洋型ブナ林、あるいはウラジロモミ林での研究は数多くおこなわれてきた。しかし、混交化した林分内での両個体群に焦点を絞った研究は少ない。本発表では、ブナとウラジロモミ個体群の南限地域における両個体群の構造を報告する。

調査は四国南西部最大のブナ林が残る愛媛県大野ヶ原・小田深山ブナ林(標高1300m)でおこなった。本地域は、全国のブナ林を植生によって区分した藤田(1986、1987)の報告で太平洋型に区分され、ブナの分布南限域に位置する。一方、ウラジロモミは本地域が最南限とされる(矢頭,1964;宮脇 編,1982)。本研究では1ha(100×100m)プロットを設置し、小方形区(10×10m 100区画)に区分して林分構造の調査を行なった。

調査の結果、プロット内のBA比はブナが57%、ウラジロモミが19%であり、本林分におけるBAの76%がこの2種によって占められていた。両個体群の空間分布を評価するためにMorishita(1959)のIδを用いて解析したところ、ブナは小径木が集中分布、その他のサイズはランダム分布を示した。一方、ウラジロモミは小径木が集中分布、中径木はランダム分布、大径木は規則分布を示し、個体サイズで分布様式が異なっていた。また、Iwao(1977)のω指数を用いて両個体群の分布相関を求めたところ、ブナの大径木とウラジロモミの大径木はω=−1となり、強い負の相関が存在していることが分かった。

本発表では、両個体群の構造を空間分布の結果だけでなく、微地形要因や更新過程を含めて検討する。

日本生態学会