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一般講演 P2-091

三宅島2000年噴火後6年間の植生変化

*川越みなみ(筑波大・生物資源),上條隆志(筑波大・生命環境),樋口広芳(東京大・農学生命科学),加藤拓(茨城県農業総合センター)

伊豆諸島の三宅島は2000年に噴火し、大量の火山灰を放出した。火山灰の放出は2001年以降終息しているが、二酸化硫黄を中心とする火山ガスの放出は現在も続いている。これら一連の噴火活動により島の植生は多大な影響を受け、噴火後大きく変化してきた。本研究では噴火1年後の2001年に設置した固定調査区における6年間の植生変化パターンを明らかにすることを目的とする。

三宅島南西部の南戸林道沿いと雄山林道沿いにおいて、面積10×10mの固定調査区を計11地点設置し、植生調査と毎木調査(DBH5cm以上の樹木を対象)を6年間行った。

ほとんどの調査区で高木層の植被率は年々減少し、草本層の植被率は増加した。2002年以降に新たに出現した種としては、カジイチゴ、ハチジョウイタドリ、ハチジョウススキ、ユノミネシダの4種が挙げられる。これらの種は森林性ではなく、噴火以前には森林内にはほとんど出現しない種であった。オオシマカンスゲは出現頻度が元々高く、出現頻度そのものは増加しなかったが、草本層における優占度の増加が著しく、2006年には11地点中3地点で優占度が5に達した。毎木調査からは、タブノキ、オオバエゴノキが大きく減少したのに対して、ヒサカキは死亡個体がほとんどなかった。

以上の結果から、火山ガスの影響を受けやすい三宅島南西部において、植生は森林から低木・草原へと退行的に変化していると捉えることができる。増加傾向が顕著なオオシマカンスゲ、ハチジョウススキ、ユノミネシダ、ヒサカキは、ガスに対する耐性があるものと考えられる。

日本生態学会