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一般講演 P2-092
本研究では東海地方に見られる湧水湿地におけるハンモック(オオミズゴケが形成する半球状の微生育立地)の形状、ハンモック上の樹木群集の構造、およびそれらの6年間の変化について調査した結果に基づいて、湧水湿地生態系におけるハンモックの機能について検討した。調査は、岐阜県土岐市にある典型的湧水湿地である北畑池湿地で行った。調査地内に存在するハンモックを対象として形状(面積、高さ)、ハンモック上の樹木群集の最大樹高を測定するとともに、木本の種毎の幹本数を記録した。調査は2000年(22箇所)と2006年(25箇所)に行った。
湧水湿地には大小さまざま(0.15-10m2)なハンモックが存在し、その高さは面積にともなって増加するものの約0.5mで頭打ちになっていた。6年間でほとんどのハンモックの面積が増加しており、面積の増加率は小さいハンモックほど高い傾向があった。一方、ハンモックの高さの増加はあまり顕著ではなかった。樹木群集の上木(>0.3m)として優占していたのはシデコブシ、イヌツゲ、ウメモドキ、クロミノニシゴリ、ヘビノボラズといった湿地性樹種で、他に森林性樹種のヤマウルシ、イソノキ、ツクバネウツギが生育していた。樹木群集の稚樹(≦0.3m)では、湿地性樹種の優占度が低下し、森林性樹種の優占度が高くなる傾向があった。森林性樹種は面積の小さなハンモックに出現することはなく、ある一定の面積以上のハンモックで出現していた。6年間でハンモック上の幹本数は増加し、特にイヌツゲの幹本数の増加が顕著であった。一方、最大樹高はほとんど変化していなかった。以上の結果から、ハンモックは湧水湿地において湿地性樹種の重要な微生育立地であるが、時間とともに発達・成長し、その過程で森林性樹種が定着するために湧水湿地の湿性遷移を促進する機能を持つことが示唆された。