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一般講演 P2-096
近年、間伐等の保育が放棄されたスギ・ヒノキ人工林内に高木性広葉樹を侵入させて、将来的には針広混交林あるいは広葉樹林に誘導しようとする試みが行われており、その目標達成のための技術確立が求められている。そのためには人工林下層への広葉樹侵入・定着にどのような要因が影響しているのか明らかにする必要がある。そこで、本研究では複雑な微地形の変化がみられる小流域に成立したヒノキ人工林下層の広葉樹分布と光環境、微地形などを調査し、広葉樹の空間分布に影響する要因について検討を行った。
調査地は津市内のこれまで無間伐であった36年生ヒノキ人工林で、周囲に広葉樹二次林とスギ人工林が隣接する小流域に成立している。この小流域全域を囲むように0.47ha の調査区を設置した。調査区内を191個の5×5m のメッシュに区切り、各メッシュ内の全ての高木性広葉樹個体と樹高1.2m以上の木本種の全幹について種名、DBH、樹高などを記録した。さらに各メッシュ内に2×2 mの調査枠を設けて樹高1.2 m以下の木本種個体の種名、樹高などを記録した。また、メッシュ交点において全天空写真を地上高1.2mと3m で撮影し、DIFを求めた。メッシュ交点の地盤高から各メッシュの傾斜角と凹凸度を算出した。
樹高1.2 m以上3 m以下の広葉樹はDIFが低く、凹型地形の谷部や下部斜面にはほとんど分布せず、DIFが比較的高く、凸型地形である尾根部や上部斜面に分布していた。メッシュごとの広葉樹幹数とDIF、凹凸度、傾斜角との関係を解析したところ、ほとんどの樹種の分布には光環境が最も強く影響していた。微地形の影響が有意であったアラカシなどの樹種もあり、樹種ごとに環境要因の影響が異なっていた。講演では、樹高1.2m未満の広葉樹分布に影響する要因や隣接広葉樹林の影響についても論じる予定である。