| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨


一般講演 P2-097

奈良県御蓋山における森林構造の13年間の変化

塩見修平,名波哲,伊東明,山倉拓夫(大阪市立大学・院理)

森林群集における多種共存機構を探るためには、構成種の個体群動態の把握が必要不可欠である。これまで樹木の個体群動態に関する研究は、 実生あるいは一定サイズ以上の個体(たとえば胸高直径1cm以上)を対象とすることが多く、その間の生活史段階の動態に関する調査は不十分であった。本研究では奈良県御蓋山のナギとイヌガシの2種が優占する森林において、調査区内に出現するすべての木本個体を対象として、13年間の動態を調査した。ナギは種子が重力散布でかつ雌雄異株であるため雌株の周囲で密度が高くなり分布に不均一さが生じ、鳥によって広く種子散布されるイヌガシがナギの密度の低いところで更新していることがこれまでの2種の種子散布様式と分布パターンの解析から示唆されている。御蓋山の北西斜面に設置された40m×40m調査区において、1993年にすべての個体にラベリングし、サイズと位置を記録した。13年後の2006年に、再調査を実施した。出現した総個体数は、1993年には7225個体であった。13年間でそのうち3702個体が死亡し、1229個体が新規加入し、2006年には総個体数が4752個体となった。ナギは5708個体から3345個体に、イヌガシは1135個体から800個体となった。ナギ、イヌガシ両種とも、実生の死亡率は高く、サイズクラスが大きくなるにつれ死亡率は低くなった。同じサイズクラスのナギとイヌガシを比較すると、死亡率はナギの方が低い傾向があった。今回の発表では、これらの個体数の変動に伴う両種の個体群のサイズ構造および空間構造の変化を解析し、ナギとイヌガシの共存機構を探る。

日本生態学会