| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨


一般講演 P2-100

リュウキュウマツ植林が亜熱帯性常緑照葉樹林の再生過程に及ぼす影響

*大迫武治(鹿大・教),久保田康裕(鹿大・教)

南西諸島南端域の西表島は、低地帯に約30−40年生リュウキュウマツの植林地が分布している。植林地の大部分は管理が放棄され、常緑照葉樹の生長により混交林化しており、これに接して亜熱帯性常緑照葉樹二次林が分布している。本研究では、常緑照葉樹二次林とリュウキュウマツ混交林それぞれに15箇所の調査区(20m×20m)を設定して両林分の森林構造と遷移過程を比較し、リュウキュウマツ植林が亜熱帯性常緑照葉樹林の再生過程に及ぼす影響を明らかにする。

リュウキュウマツ混交林では低木層から亜高木層にかけて林木幹密度が低くなった。地上部現存量は常緑照葉樹二次林よりも大きく、リュウキュウマツが林分内の約72.2%を占めていた。リュウキュウマツ混交林の優占種はシャリンバイ・タブノキ・ボチョウジであり、スダジイなどの常緑照葉樹二次林優占種の幹密度が極めて低かった。TWINSPANによる各調査区の群分析、非計量的多次元尺度法(NMS)による各調査区の種組成の序列化を行った。その結果、遷移初期のリュウキュウマツ混交林ではシャリンバイやタブノキを優占種とし、林分の発達とともにスダジイが出現し、アデクやヤマヒハツなどの常緑照葉樹二次林出現種が優占する林分に遷移することが分かった。また、ハマセンナ・ウラジロアカメガシワなどのパイオニア種や常緑照葉樹二次林出現種が混在するため種数、林木種多様性が増大した。さらに、リュウキュウマツ混交林では、出現頻度の少ない種の割合が大きく、パイオニア種が偶発的に出現することによりβ多様性が増大していた。以上の結果から、リュウキュウマツ混交林の遷移過程は常緑照葉樹二次林と異なることが示唆された。

日本生態学会