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一般講演 P2-101
北海道南部に位置する駒ヶ岳では、1950年後半から山麓南西部には多くのカラマツが植栽され、人工林からカラマツの種子が散布されて侵入・定着してきた。現在では、カラマツは駒ヶ岳に分布する主要な樹種である。本研究では、カラマツの実生が定着した後の、稚樹の成長に関する動態を解明することを目的とした。そして、土壌成分、光合成能力、それに関わる養分吸収能力、養分吸収と密接に関わる外生菌根菌の感染状況を測定した。本研究は、駒ヶ岳南東の隅田盛と、南西の剣ヶ峰山麓の800mと570mの地点に50m×50mの方形区をそれぞれ設定して、方形区内に生育する4-5年生カラマツ稚樹を対象に行った。
カラマツ稚樹の相対樹高成長率を測定した結果、0.15から0.80の範囲で正規分布を示したが、800mの稚樹の平均値は0.46を示し、570mの0.37より有意に高かった (p<0.001)。カラマツ稚樹の生育下の土壌は、カリウム、カルシウム、マグネシウムの濃度は800mの方が570mよりも高かった。また、駒ヶ岳の土壌中には高濃度のアルミニウムと鉄が含まれていた。カラマツ針葉中の葉内元素濃度を分析した結果、窒素、カリウムは800mのカラマツ稚樹の方が570mの個体より高く、高い成長率を示した一因であると推察された。また、外生菌根菌の感染率は相対成長率に対して正の相関を示し、成長率の高い個体は外生菌根菌の感染率も高かった。一方、葉内アルミニウム・鉄濃度は相対成長率に対して負の相関を示し、成長率の低い稚樹は葉内アルミニウム・鉄濃度が高い傾向を示した。なお、外生菌根菌の感染率、葉内アルミニウム・鉄濃度は2つの標高間で有意な差はなかった。