| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨


一般講演 P2-102

同種成木下における病原菌による実生の高い死亡率 −落葉広葉樹3種の植替え試験−

山崎実希(東北大院・農), 岩本晋(協和発酵工業), 市原優(森林総研東北), 清和研二(東北大院・農)

森林を構成する樹木において、種特異的な天敵(菌類や植食者)が親木からの距離や密度に依存して子個体を加害することで、親木付近に他種が更新するスペースができ、種の多様性が維持されるのではないか(Janzen-Connell仮説)と言われている。近年、熱帯林のみならず温帯林においてもこのメカニズムが作用していることが報告され始めている。このメカニズムが成立するならば、同種成木下において他種実生よりも同種実生の死亡率が種特異的な要因によって高くなると考えられる。そこで、ウワミズザクラ、ミズキ、アオダモの3樹種の成木下それぞれに3樹種を播き、芽生えた実生について死亡率と死亡要因の比較を行った。

その結果、ウワミズザクラとミズキの成木下において同種実生は他種実生よりも死亡率が高く、その主な死亡要因は立ち枯れ病と葉の病害であることが明らかとなった。立ち枯れ病の主要な原因菌であったColletotrichum属菌は宿主範囲が広い菌(多犯性)であり、3樹種の成木下の3樹種全ての実生から分離されたが、ウワミズザクラとミズキの成木下においては他種実生よりも同種実生に対する罹病率が高い傾向が見られた。これは多犯性といわれるColletotrichum属菌による立ち枯れ病に種特異性がある可能性を示唆している。また、雨季後に蔓延した葉の病害も同種成木下の同種実生に対して罹病率が高かった。これは成木の罹病葉が樹冠下の同種実生の病害の病感染源となっているためと考えられた。これらの結果から、種特異性を持った立ち枯れ病や成木と共通の葉の病害などがJanzen-Connellメカニズムの成立に寄与していることが考えられる。

日本生態学会