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一般講演 P2-103

滋賀県近江八幡市奥島山におけるニホンイノシシ(Sus scrofa leucomystax)が実生の生残に与える影響

*大饗嘉子・萩原久子(滋賀県立大・院),近雅博(滋賀県立大学),野間直彦(滋賀県立大学)

滋賀県近江八幡市北部の奥島山において、ニホンイノシシ(Sus scrofa leucomystax)が実生に与える影響を明らかにすることを目的とし、調査を行った。様々な植生タイプ6か所(コナラ林2、ヒノキ林3、アカマツ林1)において、それぞれ100m2の実生調査プロットを設置、64調査枠に分割し、2006年4月〜11月までの毎月2回、当年生実生の新規発生・死亡個体を記録した。同時にイノシシの痕跡の有無を記録し、掘り起こしについては表面積・深さを記録した。当年生以外の実生については、10月〜11月の期間、同プロットにおいて存在する個体とその死亡について調査した。また9月〜11月の期間、各植生1か所にイノシシが入れないよう16m2の柵を設置し対照区とした。

各プロットの実生調査枠における当年生実生は、イノシシの痕跡が確認されなかった調査枠に対し、確認された調査枠の平均死亡率の方が多くの期間で高かった。各プロットの4月〜11月の総痕跡確認枠数と死亡率を調査地間で比較すると、コナラ林では痕跡の少ないプロットで41.8%であったのに対し、痕跡の多いプロットでは86.3%であった。ヒノキ林も、痕跡の多かった順に死亡率が高かった。アカマツ林は対照区の死亡率61.1%に対し、調査プロットは89.6%であった。また、当年生実生は掘り起こしの深さに関わらず死亡した。

当年生以外の実生については、イノシシの踏査で死亡する個体はなく、掘り起こしによって1個体が死亡したのみであるが、その際の掘り起こしの深さは5cmであり、リターの攪乱や1cmにも満たない深さの掘り起こしでは死亡しなかった。

当年生実生ほどイノシシの踏査・掘り起こしに大きく影響されるが、1年以上生存するとイノシシから受ける影響は当年生に対し小さくなると考えられる。

日本生態学会