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一般講演 P2-104
森林の環境条件は均一でないため、その構成要素である樹木はわずかな立地条件の差でも影響を受ける。一方、樹木は寿命が長いため、環境変化に対する反応速度が遅くなる。そのため、森林生態系の動態のメカニズムを理解するには、樹木の挙動を長期的な調査によって把握することが重要である。本研究では、樹木の年輪を解析することで得られた過去の成長履歴を用いて、アカエゾマツ個体群の直径成長量が時空間的にどのように変化するかを調べた。
調査地は北海道東部阿寒湖畔に位置する雄阿寒岳である。標高約500m地点の針葉樹林内に1haの調査プロットを設置し、プロット内おいて59個体のアカエゾマツ個体を年輪解析の対象木として選定した。年輪解析には、樹幹に金属性の直径1mmの測針を高回転で刺し込み、その際の測針の回転数から、非破壊的に年輪を検出することができるDigital Microprobe(Sibtec社製)を用いた。得られた年輪情報を解析し、5年単位で8期間、過去40年分の直径成長量を推定した。
直径成長量の空間的自己相関を調べるために、MoranのI統計量を求めたところ、空間的自己相関は認められなかった。この結果は、直径成長量の空間分布には規則性がないことを示している。次に、各個体の直径成長量に影響を与える要因を調べるために、一般化混合線形モデルを用いて解析を行った。その結果、年変動、個体サイズ、周囲の個体との競争関係が直径成長量に影響を与えていた。この結果は、樹木の直径成長は40年間を通して一様ではなく、全体的に良好、もしくは不良な期間が存在し、さらにその中で、サイズが大きい個体や、周囲からの被圧などが強い環境にある個体は、直径成長量が小さくなることを示している。