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一般講演 P2-105

岡山県南部におけるシイノキ稚樹の生育環境

*位田真弓(岡山理大院・総情・生地),波田善夫(岡山理大院・総情・生地)

本研究は各森林の樹冠下の光環境の季節変動に着目し,岡山県南部におけるシイノキ稚樹の生育環境について報告するものである。草本層から低木層に生育する稚樹について,森林ごとに生長可能性を検討し,その林内構造から岡山県内におけるシイ林への遷移系列を推定した。

稚樹の樹高,葉の枚数,萌芽の有無,萌芽した幹の本数と枯死数を記録し,植生調査を行った。光環境は,各稚樹の真上で展葉期(2006年9月14日から11月22日)と落葉期(2006年12月19日から12月30日)の全天写真を撮影し,全天写真解析プログラムCanopOn 2(竹中,2003)を用いて空隙率(%),散乱光(%),光透過時間(min)を算出した。散乱光と光透過時間は夏至,冬至の太陽軌道より算出した。

稚樹は落葉林,混交林,シイ林,竹林内で確認され,22スタンドの植生調査資料は4群落2小群に下位区分された。稚樹は96個体中42個体(44%)が萌芽していた。展葉期から落葉期にかけての空隙率は,どの林も2〜4%程度の差しかなく,亜高木層〜低木層に控えている常緑樹の影響が考えられた。散乱光は空隙率に反映して算出されるので,散乱光も数%程度の差しか見られなかった。しかし夏至と冬至の光透過時間は,落葉林とよく発達したシイ林で大きな差が見られ,萌芽の有無でも同様に差が見られた。直達日光が少ないほど,萌芽しやすい傾向が見られた。

山下(1994)は,スダジイ稚樹はギャップ形成まで萌芽を繰り返しながら個体数を維持することを述べている。今回の結果も,光透過時間の少ない環境ではシイノキは萌芽再生を繰り返して,光環境の改善を待機していると考えられた。

日本生態学会