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一般講演 P2-116
Abies属2種(オオシラビソ、シラビソ)の実生の正確な樹齢推定とアロケーションパターンを明らかにするために、地下部に埋没した幹における芽鱗痕数と器官配分比に関する調査を行った。
御嶽山の亜高山帯針葉樹林(標高2,050m)の閉鎖林冠下において、5m×5mの方形区を設置した。方形区内において、無作為にオオシラビソとシラビソの実生(合計15個体)を、地下部を含めて掘り取った。掘り取った実生の芽鱗痕数を地上部における幹(地上部幹)と地下部に埋没した幹(地下部幹)に分けて測定した。地上部幹、地下部幹、葉、根の乾燥重量を測定した。幹と主根との境界は、顕微鏡下における横断切片の観察により特定した。
調査した全15個体中13個体について、地下部幹が確認された。また地下部幹からは、不定根の発生が見られた。
土壌に定着していた両樹種の個体に関しては、地下部幹の芽鱗痕数が全体の約半分占めていた。オオシラビソの地上部幹の芽鱗痕数は9―34(平均19.7)、地下部幹を含めた芽鱗痕数は28―46(平均39.0)であった。土壌に定着しているシラビソ地上部幹の芽鱗痕数は12―19(平均15.5)、地下部幹を含めた芽鱗痕数は22−34(平均29.0)であった。
倒木に定着していたシラビソの個体に関しては、地下部幹の芽鱗痕数が全体の約0―60を占めていた。地上部幹の芽鱗痕数は10―13(平均11.4)、地下部幹を含めた芽鱗痕数は11−23(平均17.8)であった。
以上の結果から、地上部に現れている部分の芽鱗痕数は、地下部に埋まった幹部分を考慮した全体の芽鱗痕数とは大きく異なっていることが明らかになった。実生の正確な樹齢推定を行うためには、芽鱗痕地下部に幹が埋まっていく要因やそのメカニズムに関する研究が必要である。