| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨 |
一般講演 P2-118
ダムによる洪水の制御は河川域における攪乱体制を激変させ, 高水敷の自然植生やそこに出現する植物種を減少させた. 河川環境の保全・復元のためには, こうした河川に分布する植物の攪乱に対する反応特性を理解することが必要である.
調査は, 信濃川中流域の相観タイプが異なる大河津と長岡の高水敷で行った. 大河津の高水敷にはヨシ・オギの大群落, 流路沿いにはヤナギの若齢林が形成されていた. 長岡ではヤナギやオニグルミなどの高木種が高水敷を広く優占しており, 流路近くにはヨシ・オギ群落も存在した. 各サイトに長さ30mの調査ベルトをそれぞれ20本ずつ設置し, 連続する1m×1mのプロットに分けて調査した. 大河津580個, 長岡600個のプロットにおいて出現植物を記録し, 機能型別(生活型、散布型)に分類した. また, 各ベルトにおいて10mおきに環境要因(平水位からの比高, 流路からの距離, 高水敷の幅)を測定した.
平水位からの比高は長岡の方が約2m高かった. t検定によって, ベルト毎の機能型別出現種数をサイト間で比較した結果, 大河津では多年生草本と栄養繁殖種が, 長岡では木本と動物散布種が, それぞれ有意に多かった. CCAによる序列化によって, 各環境要因が植物分布にどのように影響しているのかをサイト別に解析した結果, 両サイト共に流路からの距離が第一軸を強く反映していた. また, 長岡でのみ, 平水位からの比高が序列図から除外された.
比高が高い長岡では洪水による攪乱頻度が低く, 微地形の違いが攪乱体制に反映されにくいと考えられる. 結論として, 平水位からの比高は景観スケールで高水敷の植物分布を予測する良い指標であるが, 各サイト内では流路からの距離が優れた指標となる可能性が示唆された.