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一般講演 P2-119
海岸砂丘では植生が帯状に分布することが知られており、その要因として塩分や砂の移動などの物理化学的要因による影響が調べられてきた。一方、海岸砂丘の植生と土壌微生物群集との関係についての情報は少ない。しかしこのような土壌微生物は海岸砂丘における栄養塩循環に大きく関与していると考えられるため、その質や量を明らかにすることは海岸砂丘における群落の発達を考える上で重要である。本研究では海岸砂丘における植生の発達に伴って土壌微生物のバイオマスと群集構造がどう変化するのかを明らかにすることを目的とし、採取した土壌のリン脂質脂肪酸(PLFA)分析を行った。
鳥取県米子市の弓ヶ浜において、汀線から内陸側に向かって引いたトランゼクトラインに沿ってコドラートを設置し、植生調査を行った。また、各コドラートから土壌を採取し、既存の方法に従ってPLFA分析を行った。
微生物バイオマスの指標である全脂肪酸量は、内陸側に位置するハマゴウ群落で多く、汀線側で少なかった。また、全脂肪酸量と土壌有機物量との間に正の相関が認められたことから、土壌有機物の蓄積が微生物バイオマスの増加に寄与していることが示された。
微生物群集構造の指標である脂肪酸組成をクラスター解析及び主成分分析に供したところ、微生物群集構造は汀線からの距離によって変化し、特に内陸側に位置するハマゴウ群落は他の群落とは異なる微生物群集構造を有していることが示された。ハマゴウ群落以外では主成分分析で得られた第一主成分得点と土壌有機物量との間に相関が認められ、有機物の蓄積が微生物群集構造にも影響を及ぼしていることが示唆された。一方、ハマゴウ群落では有意な相関は認められなかった。これらの結果から、海岸砂丘における土壌微生物群集構造を規定する要因は汀線側と内陸側では異なる可能性が示唆された。