| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨 |
一般講演 P2-120
湿原などの過湿な立地に生育するハンノキ(Alnus japonica )の群落形態には、樹高が高く、単木状に生育するタイプや、高くならずに、さかんに萌芽更新を繰り返すタイプなどの違いが見られるが、それらの群落形態と立地環境との関係は、必ずしもよく分かっていない。本研究は、約30年前から急激に発達してきたと言われている、北海道の釧路湿原南東部にある広里地区のハンノキ群落において、ハンノキの更新パタンの場所による違いを明らかにすることを目的として行った。
2004年秋と2005年秋に、ハンノキ群落内の、低木サイト(樹高約1.5m)、中木サイト(同2.5m)、高木サイト(同4.0m)のそれぞれに、3m×3mの調査区を設け、全ての株について、地上高30cm以上の全シュートに標識を付け、樹高と直径を測定した。
シュートの樹高成長、直径成長、材積成長とも、高木サイトで大きく、低木サイトで小さかった。シュート数は、サイト間で大きな差はなかったが、株当りのシュート数は、高木サイトで多く、低木サイトで少なかった。また、シュートの新規加入率と枯死率に基づく回転率では、低木サイトが最も高く、シュートの寿命が短く入れ替わりが早いことがわかった。これらの結果から、高木サイトでは徐々に成長し、次第に単木状の群落に移行すると考えられたが、低木サイトでは、萌芽と枯死を頻繁に繰り返しながら、群落形態がほとんど変化することなく継続されるものと考えられた。