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一般講演 P2-124

水位の異なる休耕田に出現した植物種

*紙谷智彦(新潟大・農),石田真也(新潟大・院・自然科学研究科),久原泰雅(新潟県立植物園)

新潟平野の中心部に広がる大水田地帯は,氾濫原由来の湿田に大規模な排水施設が設置され,乾田化されたことによって形成された.現在では一部の潟を除いて,氾濫原の植生はほとんど残っていない.このような水田を対象に,耕作の有無や水管理の違いによって出現する植物の組成が異なるかを調べた.

調査は新潟市丸潟の約3haの範囲内にある水田を対象とした.調査対象の水田は水管理の違いと作付けの有無で5タイプ8プロットを設けた.その内訳は中干を含む通常の水管理が行われている水田(4),通常の水管理でイネが植栽されていない部分(1),冠水から湿潤状態に維持された湿性休耕田(1),排水が良好な乾性休耕田(1),排水が良好な転作後の乾性放棄畑(1)である.各プロットの大きさは0.5m×40mで,その中を連続した0.5m×2mの20区画に分け,イネの収穫期以降に各区画に出現した植物の種名を記録した.これらプロットごとに算出した植物種の出現頻度を優占度の指標とした.

出現した維管束植物種は63種で,それらの内訳は1年生40種,越年生8種,多年生14種,シダ1種であった.種類組成のクラスター分析では通常水田と放棄水田で大きく2グループに分けられた.これらグループ間では通常水田でメヒシバ,ミズワラビが,休耕田ではこれら以外のほとんどの種で,それぞれ有意に出現頻度が高かった.乾燥休耕田には,ケイヌビエ・クサネム・セイタカアワダチソウなど水田管理で問題とされる植物が優占していた.一方,湿性休耕田ではマツバイ・アオウキクサ・ウキクサ・キクモなど湿地に見られる植物などが有意に多く出現した.

調査プロットの周辺には自然群落が無いことから,湿性休耕田に出現した植物は,常時冠水により埋土種子集団から発芽が促されたと予想した.

日本生態学会