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一般講演 P2-126
北海道に分布するコナラ自然林および半自然林を対象に,その種組成と立地環境を明らかにするために,渡島半島の大沼周辺,石狩低地帯,日高地方の丘陵地の林分に36の調査区を設定し毎木調査と植生調査を行った.
各調査区における種の出現から,36調査区はTWINSPANによってコンロンソウなどを指標種として2つの植生型に区分された(指標種を欠くA型とB型).A型は,フッキソウなどを指標種とするA1型,イワガラミ,ハウチワカエデを指標種とするA2型に細分された.また,B型はチシマアザミを指標種として,これを含むB1型とB2型に細分された.これら植生型の地理分布をみると,B型は日高地方に偏って分布するのに対し,A1型は苫小牧地方,A2型はそれ以外の地域に偏って分布する傾向を示した.
気候要因を直接目的変数に用いる正準相関分析により,各植生型と気候要因との間の対応関係を解析した.その結果,I軸およびII軸における変動の,それぞれ54.3%,27.3%が説明された.また,種組成と環境要因との相関はI軸0.933(p<0.01),II軸0.837(p<0.01)で,両軸とも種組成と環境要因がよく対応していた.I軸に対してA型は正の位置を,B型は負の位置を占めていた.I軸は年降水量,夏季降水量と正の,年平均気温,暖かさの指数,寒さの指数と負の相関を示していたことから,A型とB型の種組成の違いには,生育季の降水量および気温が関与していることが予想された.一方,A型の2つの型のうち,A1型はII軸に対し正の位置を,A2型は負の位置を占めていた.II軸は積雪に関わる要因,すなわち最大積雪雪,冬季降水量,積雪深50 cm以上の日数,日本海指数と負の相関を示していた。このことは,A型の2つの植生型の種組成の違いは,主に冬季の積雪の多寡に支配されていることを示唆している.