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一般講演 P2-131

異なる伐採強度が熱帯低地林の種多様性と林分構造に与える影響 −マレーシアサバ州デラマコットの事例

*今井伸夫,北山兼弘 (京大生態研セ)

マレーシア,サバ州の熱帯低地林では、過去30年で商業伐採やプランテーション開発によって急激に森林面積が減少した。現在では、自然林はごく限られた保護区内に残されるのみで、そのほかは広大な択伐施業を受けた低質な森林が残されている。択伐施業は、伐出する樹木の数は少ないが、ブルドーザーを使って林内に縦横に道をつけるため、森林へのダメージが非常に大きい。これまで、このような劣化した二次林での生態学的研究は、比較的小面積の調査区のなかで行われてきた。そこで、マレーシア,サバ州のデラマコット森林保護区において、択伐を受けた二次林と自然林にそれぞれ2haの永久調査区を設置し、森林の種多様性や林分構造、優占種の更新の状況について比較を行った。

幹密度は、自然林で609(1493)本、択伐林で434(1022)本/haで(直径10cm以上、カッコ内は5cm以上)、特に小径木の数が自然林で多かった。また、自然林の方が択伐林に比べて、最大サイズ(直径と樹高)、断面積合計、地上部バイオマスなどすべてにおいて大きかった。出現樹種数(10cm以上)は、自然林で約300種、択伐林で約240種であった。また、この地域の優占種群であるフタバガキ科樹種の相対優占度は、自然林(51%)の方が択伐林(36%)よりも高かった。一方、攪乱依存種を多く含むトウダイグサ科樹種の優占度は、択伐林(19%)のほうが自然林(4%)よりも高かった。フタバガキ科の稚樹(高さ10cm以上DBH1cm未満)密度は約10倍、幼樹(DBH1-5cm)密度は約2倍、自然林の方が択伐林よりも高かった。択伐の影響は、フタバガキ科樹種など経済性の高い樹種のバイオマスはもとより、森林の更新や種多様性にまで及ぶことが示唆された。

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