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一般講演 P2-132

皇居外苑牛ヶ淵における抽水植物の分布と水深

*井上智美,野原精一(国立環境研究所),土谷岳令(千葉大学)

ガマ属3種(ガマ、コガマ、ヒメガマ)は世界中の湿地で見られる抽水植物である。見た目は非常によく似ているが水深分布域には違いがあり、ガマは水深の浅い場所、ヒメガマは水深の深い場所に生育する。コガマは浅い場所で見られるという知見があるが、深い場所でも生育するらしい。水深が深い場所では地下部が嫌気的になるため、そのような場所に生育する植物は酸素不足に対する耐性機構を発達させている。著者らはこれまで、ガマ属3種の酸素不足に対する耐性能力の違いについて検討を行ってきた。その結果、コガマとヒメガマはガマに比べて地下部の嫌気耐性能力が高いことが明らかとなった。本研究ではガマ属3種の水深分布動態について、これまで明らかにしてきた生理的特性を踏まえて、より詳細に検討するため、皇居外苑牛ヶ淵にみられる抽水植物群落の植生調査を行った。

調査は2004年と2005年の11月に行った。調査区(100×8m)をコドラート(1×1m)に区切り、各コドラート内の水深と植物種ごとの被度を記録した。

植物種はガマ属3種、フトイ、アシカキなどの16種が観測された。2004年、ガマは水深の浅い場所に、コガマとヒメガマは水深の浅い場所から深い場所にかけて分布していた。翌年の2005年、ガマとヒメガマは前年とほぼ同じ水深域に分布していたが、コガマは被度を大幅に減らし、水深の浅い場所にのみ生育していた。コガマは地下部の嫌気耐性能力が比較的高く、水深の深い場所に生育できるポテンシャルを持つが、他の要因で、遷移に伴って水深の深い場所から急速に姿を消していくことが分かった。2004年から2005年にかけてガマ属3種は被度を減少させ、その代わりにフトイとアシカキが被度を増す傾向が見られた。フトイは水深の深い場所、アシカキは水深の浅い場所での被度を増加させていた。

日本生態学会