| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨


一般講演 P2-133

北関東における湿原植生の類型と分布

*鈴木伸一(国際生態学セ),吉井広始(高経大付属高校),片野光一(群馬県立館林女子高校),大森威宏(群馬県立自然史博物館)

演者らは1987年より谷川岳〜巻機山〜大水上山〜平ヶ岳〜尾瀬地区に至る上信越国境の山岳地帯を中心とする利根川源流地域における植物社会学的調査研究を行っている。今回は湿原植生について報告する。本地域を含めた関東北部の山岳地帯では、尾瀬ヶ原や戦場ヶ原が規模の大きな湿原としてよく知られているが、そのほかにも大小様々な有名無名の湿原や湿地が数多く点在している。これらの湿原は、尾瀬ヶ原のように池沼や河川の氾濫原や後背地に起源を持つと考えられる盆地状の低湿地に発達した湿原と、地形的に周囲より雪が溜るため融雪が遅れ湿地となる雪田とよばれる湿生草原とに大別される。本地域では、前者は尾瀬地区を除くと少なく、後者の雪田が卓越している。特に上信越国境の山岳地帯は、積雪深が数メートルに及ぶ雪の影響によりオオシラビソ林、ブナ林など高木の森林植生の生育は制限され、ミヤマナラなどの低木林やササ草原となるが、より積雪の深い稜線の凹状地や風下斜面,沢の源頭部などの雪溜りとなる立地では雪田が発達している。これらの雪田は泥炭層が薄く面積的にも小規模なものが一般的であるが、平坦で広くなだらかな山稜や山麓の一部には、厚く泥炭が堆積し、池塘やケルミを伴った比較的面積規模の大きな湿原もみられる。これらの湿原は、ツルコケモモ−ミズゴケクラスとホロムイソウクラスの高層湿原とヌマガヤオーダーの中間湿原およびイワイチョウ−ヌマガヤ群集などのアオノツガザクラ−ジムカデクラスの雪田植生に大別されるが、ツルコケモモ−ミズゴケクラスの高層湿原はイボミズゴケよりもキダチミズゴケ、ワタミズゴケの優占植分が多く、チングルマ、イワイチョウなどを伴う雪田型の高層湿原植生:イワイチョウ−キダチミズゴケ群団が特徴的である。

日本生態学会