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一般講演 P2-135

広島県竹原市におけるモウソウチクの侵入と植生構造の関係

*鈴木重雄,中越信和(広島大・国際協力)

近年日本各地で森林へのモウソウチクの侵入が進行しており、このことが里山などの種多様性に影響することが危惧されている。一方で、モウソウチク林の立地環境による種組成が異なっていることも想定され、一概に種多様性の減少とモウソウチク林化の関係を検討することは難しい。本研究では広島県竹原市において種組成に基づくモウソウチク林の分類をおこない、種組成に地域的な差異があるかどうかを確認し、同様の種組成のグループ内でのモウソウチクの稈密度と出現種数の関係を明らかにした。

調査は2005年10月および2006年10月から11月に竹原市内のモウソウチク林、アベマキ、コナラなどの二次林とそれらの混交林において、100 m2の方形区を設置し、植物社会学的手法による植生調査とモウソウチクの稈密度の測定をおこなった。そして、植物社会学的表操作により種組成に基づいて各プロットを分類し、各群でのモウソウチク稈の密度と出現種数との関係を検討した。

この結果、調査プロットをアセビなどとチャノキなどをそれぞれ識別種群とする2群に分割することができた。両者間でモウソウチクの稈密度に差は見られなかったが、標高に有意な差が見られ、アセビを含むプロットがおよそ海抜200 m以上の地点で見られたのに対して、チャノキを含むプロットはそれより低い標高に存在していた。よって、この種組成の違いは、その地点の温度条件の違いを反映していると考えられ、九州から東北まで分布するモウソウチク林においては、その種組成に違いがあることが示唆される。そして、チャノキを含むプロットではモウソウチク稈密度と総出現種数に負の相関(r=-0.51)がみられ、モウソウチク林化にともない種多様性が低下することが確認できた。一方でアセビを含むプロットでは、稈の密度の低い林分でも、出現種数が少ないことが相関の低さと関係しているとみられる。

日本生態学会