| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨


一般講演 P2-136

都市近郊二次林における20年間での植生変化 −丘陵地と平地の比較−

*大場健太郎,星野義延,永嶋幸夫,松田梨香(東京農工大・農)

都市近郊二次林では,農用林としての管理が放棄され,都市化にともなう林分の小面積化や孤立化が起こっているが,時間経過に伴う植生の変化と環境の変化の関連性を検討した既存研究はない.本研究では,1985年設置の調査区において追跡調査を行うことにより,二次林の20年間での林分面積,周辺土地利用,管理状況,種組成の変化を明らかにし,これらの対応関係を解析し,時間経過に伴う植生変化のメカニズムを考察することを目的とした.

都市近郊の埼玉県所沢市において1985年に植生調査を行った地点で2004-5年に追跡調査を行った.また,1985年と現在のコナラ二次林の広がりと調査スタンドの周辺の土地利用,管理状況を把握した.

解析の結果,20年間に,常在度に減少や増加が顕著であった種の数を比較すると,小面積化,孤立化の激しい平地林分の方が,そうでない丘陵地に比べ,全出現種数は殆ど変わらないが,減少種の数は多く,増加種の数は少なかった.一方,地形や林分の孤立度合いが異なっていても,平地,丘陵地共に,時間経過に伴い,重力・風散布を行う夏緑草本と風散布を行う夏緑樹が減少し,動物散布を行う常緑草本,動物散布を行う常緑樹や外来・逸出種が増加した.さらに,林分の小面積化,周辺のコナラ二次林の減少,宅地の増加と,風散布を行う夏緑草本及び風散布を行う夏緑樹の減少,動物散布を行う夏緑草本及び外来・逸出種の増加の間に対応関係が見られた.また,現在林分面積が小さく,周辺のコナラ二次林の占める割合が小さく,宅地率が大きいほど,夏緑草本の減少と外来・逸出種の増加傾向が著しく,管理放棄されたスタンドほど,夏緑草本の減少と動物散布を行う常緑樹の増加傾向が著しかった.以上より時間経過に伴う植生変化には,林分面積,周辺土地利用,管理状況が関係していると考えられた.

日本生態学会