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一般講演 P2-139

東北地方中部沿岸から内陸地域におけるブナ優占型林分の組成と構造

*富田瑞樹(東京情報大), 平吹喜彦(東北学院大), 原正利(千葉中央博), 菅野洋((株)宮城環境保全研究所), 櫻井悠(岩手大院), 竹原明秀(岩手大)

原(2006)は,東日本太平洋側を対象にブナが生育する林分の分布や種組成を調べ,ブナの分布と温量指数・緯度・標高との関係を明らかにした.その結果ブナは,下部温帯林から上部温帯林にわたって林冠構成種となって生育し,モミ・スギなどの温帯針葉樹などを含む多様な樹種と混交している実態が把握された.本研究では,東北地方中部沿岸から内陸地域におけるブナ優占型林分の種組成と構造の植生地理学的な変化を明らかにすることを目的として大面積調査区を設置した.

調査地は,三陸海岸中部に位置する霞露ヶ岳と十二神山,奥羽山地の東麓に位置する自鏡山,奥羽山地中部に位置する栗駒山に残存する発達した落葉広葉樹林である.霞露ヶ岳には2006年に0.5haの調査区を,十二神山および自鏡山には2005年および2004年に1haの調査区を設置し,胸高直径2 cm以上の樹木を対象に毎木調査を実施した.栗駒山の調査区(1ha)においても2004年に同様の調査を行い,緒特性を比較した.各調査区は,北緯38°53′から39°31′,海抜217mから780mの範囲に位置する.

霞露ヶ岳・十二神山・自鏡山・栗駒山における出現種数は, 43/0.5ha・65/ha・51/ha・36/haであった.4調査区に共通して出現した種には,ブナやホオノキ,日本海型ブナ林の標徴種であるハウチワカエデなどが含まれた.一方,霞露ヶ岳・十二神山・自鏡山にのみ出現した種には,イヌシデやアワブキ,コナラなど中間温帯林を特徴付ける種が顕著だった.種の多様度は十二神山・自鏡山で高く,胸高直径5 cm未満のブナ稚樹の幹数は霞露ヶ岳・十二神山・自鏡山・栗駒山の順に増加した.

日本生態学会