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一般講演 P2-141

本州中北部のコナラ河畔林の組成的特徴

野田浩(東京農工大・院・連農),吉川正人,福嶋司(東京農工大)

コナラは朝鮮半島から北海道にかけて分布する落葉高木で,暖温帯上部から冷温帯下部において二次林あるいは自然林の主要な優占種となる.コナラ林は主に山地や台地に広く成立しているが,本州東部の内陸部では河川中流の河畔砂礫地にも自然林を形成している.本研究では,このような河川沿いに成立するコナラ河畔林を対象にして植生調査を行い,組成的特徴を考察した.その際,比較のためにコナラ河畔林の近傍に成立している山地や台地のコナラ林においても同様に調査を行った.

調査地は本州東部の太平洋側を流れる小武川(富士川水系),大谷川(利根川水系),蛇尾川(那珂川水系),葛根田川(北上川水系)である.これらの調査地は35°30′N(小武川)と39°40′N(葛根田川)の間に位置している.コナラ河畔林は河川が山地から低地に流出し,河床勾配が緩やかになる場所にみられ,地形的には扇状地性低地,あるいは谷低堆積低地上に成立している.

植生調査の結果,小武川,大谷川,蛇尾川,葛根田川からそれぞれ14:7(河畔林:山地林),7:9,17:12,13:8の調査資料が得られた.1スタンドあたりの構成種数はいずれの地域においても河畔林の方が高い傾向がみられた.また,各地域内において河畔林と山地林との組成の類似性をみると,小武川で最も類似度が低く,葛根田川で最も高かった.いずれの地域でも多くの種が河畔林あるいは山地林に偏った出現傾向を示したが,河畔林に偏る傾向が強い種として,アブラチャン,ウラゲエンコウカエデ,ミツバウツギ,ヤマウコギ,オシダなどがみられ,逆に河畔林で欠落し,山地林で出現頻度の高いものとしてアオハダ,ヤマツツジ,オケラ,シラヤマギクなど一定の組成の偏りが認められた.

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