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一般講演 P2-142
日本の豪雪地帯は場所によって5−10mもの積雪がある。そこに生育する植物は継続的に生育・生存するために、この多雪に対する何らかの適応的戦略を有していると考えられる。多雪地帯では寒さに対する適応もさることながら、特に樹木は雪の重量による力学的負荷に対する適応が必要であると考えられる。したがって、本研究では多雪地における樹木の力学的特性を中心とした物性値について調べることを目的とした。
調査地は群馬県水上町藤原とした。当地の植生タイプは緩斜面上にマルバマンサク−ブナ群集が、急斜面上にはミヤマナラ群集が、岩角尾根部にはアカミノイヌツゲ−クロベ群集が成立していた。前記に二群集にはブナ、ミヤマナラなどの広葉樹によって構成され、後者はクロベ、ヒメコマツなどの針葉樹が林冠層で優占していた。
生育する樹木の幹や枝の物理的特性を調べるため、樹木を切り出し、力学的試験を行った。試験に供された樹種はブナ、ミズナラ、ミヤマナラ、オオカメノキ、ウワズミザクラ、リョウブおよびハウチワカエデの7種の夏緑広葉樹である。
実験の結果、枝および幹の破壊強さ、比重および含水率は樹木の部位にかかわらず同一樹木内で一定の値を示した。高木種は亜高木種・低木種より高い力学的特性を示すことが明らかになった。多雪に生育する樹木は、雪による力学的負荷に対して幹や枝が折れるのを防ぐため、組織のより高い物理的特性を獲得していることが示唆された。