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一般講演 P2-144

伊豆諸島利島の風衝面における種組成と構造、種多様性の垂直変化

*小嶋紀行(横国大院・環境情報),藤原一繪

伊豆諸島では、冬季に西寄りの季節風の影響を強く受けることが知られており、これが植生を規定する要因になっている可能性がある。そこで、伊豆諸島の利島の風衝面にあたる西斜面で、種組成や植生構造がどのように変化しているのかを明らかにすることを目的として、山麓から山頂までの様々な標高に11ヵ所の調査区を設置し、毎木調査を行った。

毎木調査によって得られた各種の優占度を用いてクラスター分析を行った結果、山麓域のタブ−ヤブニッケイ型(Pt-Cj型)、中腹域のシイ−タブ型(Cs-Pt型)、山頂域のヒサカキ−オオバエゴノキ型(Ej-Sj型)に分けられた。樹高・最大胸高直径・胸高断面積合計は、いずれもCs-Pt型で高い値を示したが、Pt-Cj型とEj-Sj型では著しく低い値を示した。一方、樹種の多様性(H’)および均等度(J’)は、Pt-Cj型とEj-Sj型で高い値を示し、Cs-Pt型は低い値を示した。

これらより、山麓域のPt-Cj型と山頂域のEj-Sj型では、ともに季節風の撹乱作用によって競争的排除が緩和された結果、樹種の多様性が増大していると考えられた。

また、Pt-Cj型とEj-Sj型の植生構造は似通っていたが、山麓域では常緑広葉樹および常緑針葉樹、山頂域では常緑広葉樹と落葉広葉樹が優占していた。これは、利島は山頂まで常緑広葉樹林域であるが、山頂域では冬季の積算気温が低いために、撹乱後に成立する群落で落葉樹が優占的になったと考えられる。また、Pt-Cj型ではタブ、ヤブニッケイ、ヤブツバキ、クロマツなど耐塩性の高い種群が優占し、スダジイやヒサカキなど耐塩性がやや低い種群が欠落していた。これより、利島のように面積に比して標高の高い島では、標高の高い領域まで塩風害を強く受けている可能性があると考えられた。

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