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一般講演 P2-148
【はじめに】 東京湾東岸の千葉県木更津市に位置する小櫃川河口干潟は、多くの塩湿地性植物が現存する湾内でも数少ない約40haの塩湿地である。1974年(延原ら、1980)以降、5から10年ごとに全域の植生調査が行われてきており、近年、当研究グループの金子ら(2005)によって、塩湿地全域の優占種であったヨシ(Phragmites australis)を含む満潮時冠水型の塩性湿地群落から、アイアシ(Phacelurus latifolius)を主とした満潮時非冠水型の塩性湿地多年生群落へ種組成の変化が報告されている。本研究では、過去の優占種であったヨシと、現在繁茂してきているアイアシ、加えて、その下層植生として分布するシオクグ(Carex scabrifolia)に注目し、それぞれのフェノロジーと分布環境を比較することで、群落の種組成変化のメカニズムを明らかにすることを目的とした。
【調査地と方法】 現地調査は、ヨシ、アイアシ、シオクグの純群落を含み、小櫃川本川と澪筋に挟まれた、長辺約300m、短辺約100mの中洲で行った。3種の純群落に永久コドラートを設置し、地上部の生長とフェノロジー比較を行った。
【結果】 3種の地上部生長およびフェノロジー調査の結果、アイアシは3月に地下茎からの再生産を行い、7月に生長速度が最大になった。ヨシは4月に地下茎からの再生産を行い、9月に生長速度が最大になった。アイアシとヨシの平均最大群落高は、それぞれ8月に139±33cmと10月に151±31cmであった。シオクグの生長速度が最大になったのは6月末で、12月まで継続した生長がみられた。平均最大群落高は7月に42±8cmであった。本講演では、生長とフェノロジーが種の分布にどのように関係しているのかを論じる。