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一般講演 P2-152

里山林に生育する低木性鳥散布植物の果実の成分分析

*田中 美那,木村 和也,木下 栄一郎,田崎 和江(金沢大学)

里山林に生育する低木性鳥散布植物の果実の成分分析

田中 美那(金沢大学・自然科学研究科)・木村 一也(金沢大学・自然計測セ)・木下 栄一郎(金沢大学・自然計測セ)・田崎 和江(金沢大学・自然科学研究科)

果肉や種衣を報酬として鳥に与え、種子を運んでもらう鳥散布植物種にとって、果実の形質は植物の繁殖成功を決定する要因であり、果実食鳥類の採餌選択における形質の重要性が示唆されてきた。果実の大きさ・形・色・栄養成分は、鳥による果実消費効率、種子の散布効率、植物個体群の維持に影響する。国内では果実の種・個体数と飛来する鳥種・個体数の季節変化が一致することが報告されている。温帯域でみられる果実食鳥類は繁殖、渡り、越冬といった生活様式を背景に栄養要求性が周期的に変化すると考えられるため、果実の栄養成分は鳥類の局所的・地理的分布に作用すると考えられる。本研究では、国内での報告例が乏しい果実の栄養成分に注目し、里山林に生育する低木性鳥散布植物を対象におこなった成分分析の結果を紹介する。

調査は、石川県金沢市郊外に広がる里山林で行った。植物は、ガマズミ、ミヤマガマズミ、コバノガマズミ、コマユミ、ムラサキシキブ、ヒサカキ、を対象とした。果実が熟す10〜12月に採取した果実について、水分は常温加熱乾燥法、脂質は酸分解法、タンパク質はローリー法、灰分は直接灰化法、を用いて分析し、炭水化物については100−(脂質+タンパク質+水分+灰分)により算出した。

その結果、果実の栄養成分は、植物種に関わらず、おおむね水分が全体の80〜90%、脂質は0.1%未満、タンパク質は約0.4%、灰分は約0.9%、残りが炭水化物という結果であった。この結果から、一般に食されている果実(りんご等)と野生の果実の栄養成分組成に大きな違いはない、ということがわかった。

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