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一般講演 P2-156

綾照葉樹林における鳥散布シードレインの偏在性と年変動

小南陽亮(静岡大・教育)

なぜ森林において多様な樹木が共存できるのかという問いに対するひとつの答えとして、実際の森林では、種子が成育適地に到達できなくする制限(種子散布制限)が強く働くために新規加入制限が生じ、生活史戦略や生態的地位の違いが許容する以上の種の共存が可能となるという見方がある。しかし、その検証には種子の分散を大面積で長期的に観測したデータが必要であるため、種子散布制限の発生メカニズムとその制限が樹木の共存に及ぼす効果について具体的解明が不足している。

鳥を媒体とする種子の分散(鳥散布)では、散布種子の空間分布(シードレイン)には鳥の行動に起因する著しい偏在性があり、そのために種子散布制限が強く働くと予想される。そこで、演者は、構成樹種の8割が鳥散布性であり、樹種間でしばしば同じ鳥種が媒体となっている照葉樹林を対象に、鳥散布によるシードレインがもつ偏在性が樹木にとっての種子散布制限となることを検証した。宮崎県綾町の照葉樹林において種子から成木までの動態を長期的に観測したデータを解析した結果、鳥散布のシードレインがもつ偏在性と年変動はある空間に到達する種の組み合わせを多様に変動させる傾向があることが示された。このことから、鳥の関与によって変動的な種子散布制限が発生し、その制限は樹木の共存に貢献的に作用するのではないかと考えられた。

日本生態学会