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一般講演 P2-159

アカネズミの個体群構造がドングリの貯食型散布に与える影響

岡怜奈(新潟大学院自然科学),箕口秀夫(新潟大学農)

ドングリは秋から翌春にかけてドングリを捕食,貯蔵する齧歯類や鳥類に散布を依存している.なかでもアカネズミはドングリの種子捕食者・種子散布者として森林の更新に重要な役割を果たしている.そこで本研究では,アカネズミの活動量,および個体群における地位がドングリの消失速度,散布距離,埋土深,および生存率に与える影響について検証した.

調査は新潟大学構内のクロマツ人工林に1haの調査プロットを設置して行った.アカネズミの個体群構造を明らかにするため,2005年9〜12月,2006年4月の計5回,連続4晩の記号放逐法で捕獲調査を行った.ドングリの消失速度,散布距離,および埋土深を明らかにするために,4つのケージA〜Dを設置し,磁石を埋め込んだマテバシイのドングリを25個置いた.その後,連日ドングリの消失個数を記録するとともに,金属探知機を用いたドングリの追跡調査を行った.この調査を10,11,および12月の計3回繰り返した.また,翌春にもドングリを探査した.

ドングリの追跡調査を行った期間,ケージ周囲において定住性個体が出現したケージはBとDであった.また,アカネズミの捕獲頻度の増加に伴い,ドングリの消失速度が速くなる傾向が認められた.各ケージにおける散布距離を比較した結果,ケージA・CがケージB・Dより有意に遠くなっていた.各ケージにおける埋土深を比較した結果,ケージB・DはケージA・Cより有意に深くなっていた.1ヶ所に埋土されているドングリ数をケージ別で比較した結果,集中貯蔵はケージBとDで多く見られた.翌春における,ドングリの生存率は全体で42%(ケージA20%,ケージB35%,ケージC32%,ケージD72%)であった.これらのことから,定住性個体が出現する場所に落下したドングリは,近くの深い場所に集中貯蔵され,森林の更新にあまり関与できないと考えられた.

日本生態学会