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一般講演 P2-160

谷津田小河川の堆積物中に含まれる植物種子の分布特性

*伊藤浩二,加藤和弘(東大院・農・緑地植物実験所)

河川を通じた種子散布の研究は主に欧州の河川を中心に行われており,離れた個体群同士を連結させる回廊の役割を果たしていることが指摘されてきた。しかし水路を通じた種子散布が下流方向の生態系の生物多様性にどのように貢献しうるのかについての知見は乏しいのが現状である。本研究では栃木県南東部の丘陵地谷津田の水路を対象に,河川を通じた植物種子の分散パターンがどのスケールのどのような要因に規定されているのかを,河川縦断方向に沿って水路内堆積土壌中に含まれる種子を調べその変化パターンを捉えることで解明することを試みた。具体的には水路内堆積物中に含まれる種子組成と,ランドスケープスケールと局所スケールの異なる2つの変数セットの環境要因をPartial RDAの手法で関連付け,種子組成と強く関わる要因を抽出した。対象の谷津田水路の最上流部から約3km下流の地点まで連続的に淵部分にサンプル地点を設け, 2006年1月の平水時に39地点で土壌を採取した。種子組成は実生発生法により調査した。

変数増加型のステップワイズ選択による制約つき序列化手法のRDAを実行したところ,水路内種子組成の変動を説明する要因として,上流からの距離および土砂粒径の変数が抽出された。またランドスケープスケールの変数セットが説明する変動割合が10%程度であるのに対し,局所スケールの環境変数セットにより説明される変動割合はおよそ37%に上ることが分かった。また個々の種に注目して、GLMによるモデルの当てはめを行うことにより上下流方向の入れ替わりを検証したところ,上流域に限定的な種と下流に行くほど増加する種が存在することが認められた。このような分布パターンは種子供給源となるサンプル地点の周辺植生の種組成が,上下流方向で変化していることを反映したものであると推察された。

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