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一般講演 P2-163

垂直風胴を用いて計測したトネリコ属翼果の二重回転

斎藤茂勝(自然研),市河三英,川瀬恵一,三村昌史,酒井敦(国際農水研),倉本惠生(森林総研),杉本剛(神奈川大工)

トネリコ属翼果は散布時、翼果の正中線を軸に回転しながら種子に近い部分を中心に水平回転している。日本産のトネリコ属5種について、垂直風胴内で空中停止させる方法を使って二軸の回転速度と回転方向を調べた。

調査方法: 調査対象種はアオダモ、ヤマトアオダモ、ヤチダモ、マルバアオダモ、シオジの5種である。各種欠損のない50個の翼果を選び、それぞれ重量、面積、翼張および翼弦長を測定し、垂直風胴を用いて終端速度、水平回転速度、正中軸回転速度を測定した。終端速度は垂直風胴内で空中停止時した時の風速とした。二軸の回転速度は空中停止中にストロボスコープを用いて測定した。このうち正中軸回転速度は、ストロボを十分高い点滅速度から低下させ、はじめてみかけのブレードの表裏がすべて揃った状態の値とした。また、ヤマトアオダモ5個体とヤチダモ、シオジ各1個体について、コマ間隔500マイクロ秒のハイスピード画像を撮影し、回転方向と回転速度を確認した。

結果と考察: 水平に1回転する間にみられる正中軸回転数は、アオダモ:7.3回、マルバアオダモ:5.5回、ヤマトアオダモ:5.3回、ヤチダモ:4.4回、シオジ:3.3回で、これはアスペクト比が大きな順と等しかった。正中軸の回転方向は、水平回転方向に対して常に下から上に向かっており、「ころがり翼(タンブリング翼)」の飛行原理と類似していた。このことから、二重回転する散布体は横風条件においてマグナス力による揚力が発生している可能性が考えられた。

※「0586 垂直風胴を用いて計測した風散布植物30種の散布体特性」参照

日本生態学会