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一般講演 P2-164

タイの湿潤常緑林の林床と林冠における果実食動物による果実選択の違い

*鈴木俊介(滋賀県大),北村俊平(立教大),近雅博(滋賀県大),湯本貴和(総合地球研),Pilai Poonswad(マヒドン大),Phitaya Chuailua, Kamol Plongmai(サイチョウプロジェクト),丸橋珠樹(武蔵大),野間直彦(滋賀県大),Prawat Wohandee(タイ王立森林局)

果実形態の特徴は、果実食動物による餌選択において重要であるが、林床での果実選択に関する情報は限られる。本研究は、タイのカオヤイ国立公園の湿潤常緑林において、林床での果実食動物による果実選択における果実形態の特徴を明らかにし、林冠での果実選択の特徴と比較することを目的とした。

林床での果実利用は、61種の果実を対象として、自動撮影装置を用いて果実を訪れる動物種を記録した。林冠での果実利用は、16種の植物において12時間の直接観察を行い、訪問する動物種を記録した。林床と林冠における果実選択の比較は、両方の調査で共通する13種の植物での結果を用いた。調査した植物種の果実・種子のサイズ、種子数、果実の色、果皮の形態を記録した。

林床では、最も小型のネズミであるNiviventer fulvescensだけが、明確な果実形態に対する選好性を示し、小さなサイズの種子が多く含まれる果実を選択した。その他の果実食動物では、果実形態の特徴に依存した果実選択は認められなかった。一方、林冠では、小型の鳥類、大型の鳥類、哺乳類のそれぞれで、果実形態に非常に依存した果実選択を示した。果実サイズは、林冠での小型の鳥類による果実利用を制限したが、林床では、齧歯類による幅広い果実サイズの利用や鳥類による二次的な消費のため、果実選択に影響しなかった。また、果実の色は林冠での果実選択において重要な特徴であったが、地上性哺乳類は色覚が発達していないため、それらの果実選択にとっての重要性は低いようだった。

日本生態学会