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一般講演 P2-165

果実食鳥類の地域的分布は森林の果実生産に対応しているか? 〜北陸版みのりプロジェクトからの報告〜

*木村一也(金大・自然計測セ),田辺慎一(里山科学館キョロロ),中村浩二(金大・自然計測セ)

果実資源の地域規模的な配置は果実食鳥類の分布を決定する要因のひとつと考えられる。我が国において液果樹種は落葉・常緑広葉樹林の主要な構成要素であり、その結実は秋から冬に集中する傾向がある。その結実時期に対応して果実食鳥類は高緯度地方から低緯度地方へ渡来し、果実を消費しながら越冬することが報告されている。このことから、果実の質的・量的な豊富さが果実食鳥類の分布に強く影響していると考えられる。しかしながら、果実が時間的・空間的に予測不可能な資源であるため、果実と果実食鳥類の数的な対応関係は不安定であることも予想される。これまで果実―果実食鳥類の局所的な対応関係が明らかになる中で、両者の地域規模あるいは全国規模の長期的動態の解明が望まれている。本研究では、果実生産と果実食鳥類の分布の対応関係を明らかにするため、北陸地域の中山間域から低地にかけて位置する10カ所の林分で、2003年から2005年に渡って果実生産と果実食鳥類のモニタリング調査をおこなった。 その結果、果実と果実食鳥類のあいだには種組成における年間・調査地間の対応はなかった一方で、飛来鳥数の多少にもとづいた調査地グループごとに数量とその年間の変動幅において調査地間で強い正の相関がみられた。さらに果実生産に対応した果実食鳥類の飛来数は、凶作年ほど顕著にあらわれることが明らかとなった。以上から、果実食鳥類の種群・個体群は時間・空間的に変化する果実生産量を柔軟に追跡しながら移動していると考えられ、移動の主要経路が存在する可能性が示唆された。一方で、調査地すべての飛来鳥数の動態が一連の果実生産パタンからのみで推定するには至らなかった。移動経路の選択に寄与する要因の絞り込みにはさらに景観的要因を考慮する必要がある。

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